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会長挨拶

2022年度会長就任挨拶

Message from the President

福泉  靖史
福泉 靖史
FUKUIZUMI Yasushi

 4月の総会にて、2022年度の日本ガスタービン学会会長に選出されました、福泉です。学会長就任にあたり、ご挨拶を申し上げます。

 今年は、学会創立50周年にあたり、色々な記念行事が計画されています。この節目に、過去の振り返りを行いながら、今後の学会の在り方に関して、皆さまと議論を進め、社会に対して価値ある提案を出来るように考えてまいりたいと存じます。

 まずは、昨今の学会運営状況に関してですが、コロナ禍での難しい環境下、太田前会長のリーダーシップのもと、各理事、委員の方々のご協力により、オンラインでの定期講演会を実施するなど、早速新たな運営方法に取り組まれ、新しい学会運営手法の基礎を構築されました。本年度も、引き続きこのような皆様のご協力を得ながら、新しい学会運営に取り組んで参りたいと存じますので、会員の方々におかれましては、どうぞご忌憚ない意見をいただければと存じます。

 さて、現在の学会の課題は、日本ガスタービン学会に限らず、会員数の減少であります。エナジートランジションと言う、100年に一度と言われるようなエネルギー革命が進みつつあり、これが化石燃料を利用する機械に対してネガティブな印象を与え、若い方々の興味を失わせることにもつながっていると推察いたします。しかし、実際に社会のインフラストラクチャーを構成し、皆様の社会・経済活動を支えているのは、未だにこれらの機械類であることが、正しく認識されているように思えません。一方、これらの機械に関しても、エナジートランジションの動きに応じて、進化を求められる状況にあることも事実であると思います。

 比出力が大きく、エネルギー密度の大きなガスタービンに求められる役割は、本体自体の進化のみならず、カーボンニュートラル燃料の適用など、まだまだ多いと感じておりますので、是非とも若い方々にガスタービンと言う機器を進化過程にあるエネルギー機器とポジティブに捉えられる啓蒙活動を、学会活動を通じて進めてまいりたいと存じます。

 更に言えば、この学会の活動の全般的な低迷は、別の社会的背景もあるように思います。つい最近、新聞の1面トップに「低学歴国ニッポン」との衝撃的なタイトルの記事が掲載されました。記事では、「産学官で意識改革を」との提言もなされておりました。学問や研究の深化に対する日本社会の評価の低さが一因との考察もされていましたが、最近の社会情勢を見ていると、そのように感じることも確かにあります。

 例えば、エネルギートランジションの議論を見て最近感じるのは、世の中の新たな動きを具体化して行く議論の深みの無さであり、どちらかと言えば、情緒的に地球温暖化防止を叫び、ESG投資など、金融ビジネス関係者の生み出すトレンドに振り回され、株価を気にしてトレンドに乗らなければと焦る企業経営者の姿です。これは、私自身、自らを省みてのことでもあります。世界中で投資先を求める巨大な資金が、早くその活用先を求めようと拙速な動きをしているようにも見え、より冷静で具体的な検討や既存インフラの活用などの段階的な展開の議論があっても良いと思います。

 日本ガスタービン学会では、かねてより航空エンジンも含めたエネルギーインフラ機器の将来に関して、定期的な議論を行っていますが、産学官の連携による、日本にとって相応しいエネルギー戦略の深堀検討や、更には大学の学部連携による、より深い社会学的見地も含めた、正論の検討など、学会こそが、そのようなしっかりした議論と検討の先駆けをする場となり得る可能性を持っているように思います。少々、学会活動に大風呂敷を広げるような言い方になりましたが、これまでのガスタービンと言う製品に特化した活動から、社会課題の解決手段としての学術、技術の役割の認識を通じて、若い方々の知性を刺激するような、学会自身が意義ある活動を産み出せれば、おのずとそこに意識の高い若い方々が集まって来るのではないかと期待します。知性の深化に対する社会の理解が低いのも、そもそも知性を生み出す場を持っている側の活動にも責任があるようにも思います。

 今年度は、コロナウイルスの感染状況も、少しは落ち着いてくるのではないかと期待し、対面とオンラインでのハイブリッドでの協議の機会をなるべく増やして、皆様と闊達な議論が行えるように考えたいと思います。また、今年度はより多様性を指向して、若手、女性にも活躍していただきたいと思います。

 ウクライナを巡る国際紛争は、世界のエネルギー情勢やサプライチェーンに大きな影響を与え、エネルギー資源小国である日本は、早速この影響を受けています。今後の世界では、環境負荷の低減の基本的方向に加え、その時々に発生する極端な変化にも対応して行く必要があるようにも思います。そのような変化に対して、正論を冷静に提供できる可能性のある、学会としての存在感を出して行くために、会員皆様と闊達な議論の場を設けてまいりたいと存じますのでどうぞ宜しくお願い申し上げます。